近年の高校サッカーで非常に激しい論争を引き起こしているテーマが
『ロングスロー』
ではないでしょうか
試合終了後の監督インタビューで
「うちにハンドボールの文化はなかった」
とコメントした監督がいたこともありました。
全国大会やプレミアリーグの試合でロングスローから得点すると、こぞってTwitterでは育成を放棄したチームと叩かれます。
欧州の育成年代でロングスローをしているチームはない、ということも引き合いに出されていますね。
では、実際のところ、ロングスローは高校サッカーにおいて指導者目線で考えるとどうでしょうか?
私は、ロングスローを戦術として組み込むのは賛成派です。
ちなみに、私の教えるチームがロングスローをするかしないかは別の話ですが。。。
そもそも、なぜロングスローをするかというと
手数をかけずにボールをゴール前に運ぶことが出来るからです。
ゴール前にボールがあるということは、得点の可能性が上がります。
いち早くボールをゴール前に運ぶことを最優先にする。
至極当然なことだと私は思います。
2006年から1年半近く日本代表を率いたイビチャ・オシム監督が、このように話していました。
「パスが増えれば増えるほど、ミスの確率は上がっていく。1つ目のパスが成功するか失敗するのか。2つ目のパスが成功するのか失敗するのか。3つ目のパスが成功するのか失敗するのか。。。
だからこそ、いち早くシュートを打ちなさい。そうすればシュートが入るか入らないかの選択(確率)に変わってくる。」
そういった意味では、いち早くシュートを打つ局面に持っていけるロングスローは有効です。
また、中盤を省略してロングパス主体で敵を押し込み、セカンドボールを拾ってまたロングパスで攻め込むという戦術をとるチームも同様の考えでしょう。
そういった意味では、
『ロングパスもロングスローも同じ』
と私は考えています。
また、それが育成を放棄しているかどうかは別の問題です。
プロ予備軍として育てられているJユースの選手達が、技術を大事にしている指導を受けたからといって、皆が上手くなっているわけではありませんし、もちろんプロに昇格しているわけではありません。
ロングボール、ロングスローを多用する高校で試合に出続けたことで、Jユースに昇格できなかったけれど、逆転現象でプロ内定を勝ち取ったり、強豪大学に入学していく選手もいます。
結局は試合に出て、高い強度のなかプレーし続けられるか、経験値を上げていけるかが重要になっていると思います。
極論、戦術はあとから教えれますし。
今の時代、You TubeやSNSが発達し、高校入学前に、進学希望の高校がどのようなサッカーをしているのか、映像を見ることができます。また、ほとんどの選手達は練習参加や試合に参加して入学します。
つまり、自分でそういった進路を選んでいるわけです。
であれば、
(静岡県や千葉県などの名門校のような長年のファンの方は別として)応援してないチームに対して他人が横から口出しする必要もないかなと思います。
最近ではYou Tubeやネット記事において、たくさんの方たちが、海外サッカーやA代表の試合からJリーグの試合を見て、細かく戦術を分析されている方が多く見受けられます。
私も時間があまりない時は、そういった方たちの動画を見て、勉強させていただくこともあります。
しかし、そういった細かく分析出来方たちが、指導者として選手に対して戦術を浸透させることが出来るかと言われたら話しは違ってくると思います。
世界や日本のトップレベルで行われている戦術を、高校年代の選手、自分が教えているチームのレベルに合わせて噛み砕き、
伝えたいことを映像で見せるだけではなくトレーニングメニューを考え、
強度は落としすぎずに、成功体験を増やすようにしてイメージをつけていく。。。
途方もない作業の連続です。頭の中で何度もシュミレーションしたのに、子どもたちの反応が予想と違ったなんてことは多々あります。
このような練習の組み立てを出来る人は、県の強豪校の指導者ですら出来る人は限られてくるでしょう。
言うは易く行うは難しです
話しは逸れましたが、ロングスローを投げるにしろ投げないにしろ、どのチームも育成を放棄しているわけではありません。
たしかに、ボールを足で扱う競技なのにロングスローばかりに焦点を充てるのは少しズレているかもしれません。
ですが、どこの強豪校の監督たちも口を揃えて言うことは、
『全国大会でしか経験できないことがある』
ということです。
全国大会を経験すること=育成年代において重要
という信念があるのであれば、それもまた致し方ないのではないのでしょうか。