ゴールキーパーはピッチ上で唯一『手でボールを扱う』ことが許されているポジションです。
現代でも、レアルマドリードの守護神ティボー・クルトワ選手やリヴァプールのアリソン・ベッカー選手が世界最高峰のゴールキーパーと言われ、長い手足を活かして、ことごとくシュートを止めています。
さらに、一昔前では、シュートストップにのみ焦点が当てられていたゴールキーパーでしたが、現在はシュートストップに加え、ビルドアップの参加も必要とされている傾向にあります。
マンチェスターシティのエデルソン・モラエス選手やバイエルンミュンヘンのマヌエル・ノイアー選手のように積極的に攻撃に参加し、アシストをも記録する選手が出現している状況です。
高校生においてもビルドアップに参加するゴールキーパーが増えてきています。
そんなゴールキーパーにおいて、ビルドアップ時にどのようなことを考えてプレーするべきかを今日は書いていきたいと思います。
まず、ゴールキーパーに大事な能力は、ビルドアップが出来ることではありません。ゴールマウスを守ることが最優先されなければいけません。
ですが、私はゴールキーパーコーチではありませんので、ゴールを守るという技術については、違うコーチから学んでください(笑)
チームとしてゴールキーパーをビルドアップに加わえることが、必ずアドバンテージになると確信しているので、私は両方を追求しているところです。
実際に私がゴールキーパーに対して常に伝えていることは、『少しでも高い位置でプレーをする』『敵からずれてプレーする』『どこが空くのか見ながらプレーする』の3点です。
『少しでも高い位置でプレーする』はなかなかゴールキーパーにとっては難しい考え方の一つです。
ビルドアップにおいてゴールキーパーというのは、一番最初のフリーマンです。
つまり誰からも規制をかけられることなくプレーをすることが可能です。
極端な話ですが、そのフリーマンが「自陣のゴール前でプレーする」のと、「センターサークルでプレーする」のとでは、どちらがチームとしてサッカーがしやすいでしょうか。
もちろん後者です。
プレッシャーがかからず前進できるなんて、サッカーではなかなかありませんが、ゴールキーパーは唯一プレッシャーを受けずに前進できる可能性が高いポジションです。
例えば、ゴールキーパーがボールを持っているとしましょう。その際、味方2センターバックに対して、敵の2トップが牽制をかけています。
通常であれば、センターバックにパスを出して前進の方法を探りにかかります。
ですが、
「センターバックにパスを出す=敵のプレスが発動する」
という方程式が出来上がっています。
であれば、2センターバックにパスコースを維持しながら、センターバックに高い位置をとらせてみます。それに対して、2トップが釣られて下がるとしましょう。
『敵からズレてプレーする』ことも癖をつけなければ、自動的にできるキーパーはなかなかいないでしょう。
ビルドアップという動作において、フィールドプレーヤーより何段階も慣れていないキーパーは、ほとんどの確率でボールウォッチャーになっています。その状態でキーパーにパスが回ってきます。
1トップの敵フォワードがボールをそのまま追いかけてくる場合は、ある程度の距離があれば処理は可能でしょう。
厄介なパターンは敵が2トップで、パスがきた方向とは逆から敵フォワードがプレスをかけてくるパターンです。
このようなパターンの時、フィールドの選手にも同様の事を伝えている
「敵を正面に置かない。二人の敵が近い場合は、その真ん中にいること。」
をキーパーにも伝えます。
つまり、ボールではなく、逆側のフォワードを常に気にすることを意識させます。
敵の真ん中に常に立つことで、逆側の敵フォワードが突っ込んで来たのであれば、ボランチを経由して、センターバックにパスで逃げることができます。
フィールドプレーヤー同様に敵に捕まらない所を探し続けることが重要です。
『どこが空くのかを見ながらプレーする』は、より全体を見てプレーすることを要求しています。
ゴールキーパーはセンターバック・ボランチにパスをするだけでいい試合もありますが、それは敵との力関係で勝っている、もしくは自陣に引き籠もるチームに対してのみでしょう。
現在の高校サッカー(昔からそうですが)は、ほとんどのチームが、前線からのハイプレスを採用しています。
ですが、敵のゴールキーパーがマークにつくことはないので、11vs10になりますよね。
つまり、
ゴールキーパーに対してプレッシャーをかけてくる
=誰かがフリーという状況
なはずです。
であれば、その空いた選手にボールを逃がせばいいわけです。
もちろん、その際にフィールドプレーヤーが逃がしやすいように動くことはもちろんですが、キーパー自身がその意識を持っているか持っていないかで、大きな差になります。
私は、ゴールキーパーコーチがいる日に関してはキーパートレーニングを行ってもらいますが、ゴールキーパーコーチがいない日は積極的にフィールドプレーヤーの練習にゴールキーパーも参加させます。
フリーマンやサーバーという形であれ、フィールドプレーヤーのボールを動かすパススピード、判断スピードを体感することで、ビルドアップ能力向上を図れるからです。
最初にも書きましたが、ゴールキーパーはゴールを守る選手です。いくらビルドアップが出来ても失点してしまうゴールキーパーは上のレベルに上がるにつれて淘汰されてしまいますし、試合でも勝ちきれないことが増えてしまいます。だからこそ、ゴールをきちんと守る技術向上を怠らないことが第1優先です。
そして、そのうえでビルドアップにチャレンジすることが重要ではないでしょうか。
これを意識させるとキーパーのビルドアップがさらに良くなる!
などあればコメントで教えてください。