『センターバックについて教えてほしい』
という、なんとも難しい質問を頂きました。
随分前に質問を頂いており、センターバックについて、何を書こうか迷っていましたが、先日、Jユースのコーチと話をして整理ができたので、書いてみようと思います。
『センターバックに必要な能力』
これは、日本代表のセンターバックの変遷をを見ればわかるように、近年センターバックに求められる能力が増えているように思われます。
ひと昔前では、田中マルクス闘莉王元選手・中澤佑二元選手のような、大柄で対人や空中戦に強い選手、いわゆる『守備者』を置く風潮がありました。カテナチオで有名なイタリア代表も、ファビオ・カンナバーロ選手のように身長は低くても『対人の鬼』と言っても過言ではないような選手を配置し、ゴールを守っていました。
ところが最近は、日本代表では、冨安健洋選手、板倉滉選手、谷口彰悟選手のように対人はもちろんですが、それに加え、ビルドアップ能力も求められるようになっています。世界ではリヴァプールのフィルジル・ファン・ダイク選手や、マンチェスターシティのヨシュコ・グヴァルディオル選手たちが圧倒的なパワーとスキルで攻守において存在感を発揮しているのが現状です。
では高校サッカーにおいてはどうでしょうか。
志向するサッカーによって左右されることは間違いありませんが、守れる選手つまり『守備者』が必要であると私は考えます。
レベルが上がれば上がるほど、能力の高い前線の選手を揃えているチームが多いです。そんな相手に対して対人で負けない、粘り強く守備ができる、ボールを奪える選手が後ろにいてくれることは、チームにとって安心感を与えます。
攻撃は最大の防御という考え方はありますが、マンチェスターシティですら100 %ボールを支配することはできません。必ず守備に回る時間があります。そのときに失点をしないことが勝ちにつながると考えるとやはり『守備者』は必要ではないでしょうか。
近年Jユースを見ても小さくてボールを動かせる選手よりも、ボールは動かすのが苦手だけど大きい選手を昇格したり、スカウトで獲得している傾向にあります。
あるユースのコーチとお話しをさせてもらった際にはこのように話していました。
「ビルドアップは教えることができても、身長は教えれない。ポジショニングは教えることが出来ても対人の守備は教えれない。トップチームが求める能力はチームで守れる能力ではなく、個で守れる能力。そこから考えると、まずは守れることが最優先です。」
チームとして守備をすることで、ある程度センターバックへの負担は減らすものの、最小局面の1vs1の守備では絶対に負けない、という選手が不可欠であると考えます。
私が小学生時代に横浜Fマリノスのスペシャルクラスに所属していた時も、県屈指のチームでは10番として活躍している選手であっても、技術があって、かつ1vs1の守備に長けている子が後方のポジションに置かれていました。決してパスが上手い子を後ろに置くことはしていませんでした。小学生の時点から、適性を見抜くプロのコーチ達がそのようにコンバートするのですから、間違いないでしょう。
更に高校サッカーであれば、避けては通れないのがロングボールの対応です。
たかがヘディングと軽視される傾向にありますが、センターバックがヘディングで跳ね返せるか、跳ね返せないか、だけでセカンドボールの回収位置が変わってきます。強いては、押し込まれるか、押し返せるかに繋がってきます。
「前からプレスをかけたいけど、後ろが跳ね返せるか心配」
なんて考えていては、プレスを成立させることが出来ません。
チームとして前からプレスをかけ、長いボールに対しては個で跳ね返す。そこに戦術はいらないと思います。
その上で、ビルドアップ能力を向上させてあげることが、指導者の仕事ではないでしょうか。
フランス代表でマンチェスターユナイテッドに所属するラファエル・バラン選手は、レアルマドリード時代のチャンピオンズリーグ、マンチェスターシティ戦で自陣のペナルティエリアでビルドアップミスを起こして失点をしています。
つまり、世界のトップレベルの選手であっても完璧にビルドアップをこなすことは難しいのです。であれば、チームとしてビルドアップでこれが必要と考えることがあれば、そこを伝えていくことが指導者の腕の見せ所でしょう。
最後はチームの特色でどのような選手がセンターバックとして必要かの誤差はありますが、基本的には高校年代においては、『守備者』として守れる、跳ね返せる能力が必要不可欠だと考えます。
皆さんはどう考えますか?意見があれば教えてください。