全国常連コーチによる高校サッカー戦術

高校サッカーまたはそれ以下の年代で使える戦術、原則について深堀しています。あくまで私個人の意見です。参考にしていただいたり、意見を頂けると幸いです。

ビルドアップの考え方②

 

 前回の記事ではビルドアップで必要不可欠な3つの優位性、『質的優位』・『数的優位』・『位置的優位』を説明しました。

 特に位置的優位に関しては、チームとしてだけでなく、個人としても必ず理解しておいたほうが、サッカーが簡単になる要素です。

 コンマ何秒のせめぎ合いをしている中で、相手のプレスがコンマ何秒でも毎回遅くなるということはメリットしかないはずです。是非選手に意識をさせてあげてほしいです。

 

 さて、今日はビルドアップの時に何を意識してプレーするかということを書いていきたいと思います。

 当然、ただボールを動かしていればいいわけではありません。

 

 

 ここで、まず前置きとしてお伝えしたいことは

 『敵や味方との位置関係において正しい場所に立てれば自分たちはあまり動く必要がない』

 という考え方は間違っているということです。

 ビルドアップをするといって、人の配置ばかりを気にしてしまい、ボールが上手く回らない、なんてチームをいくつも見たことがあります。

 「ボール回したいんだけどそれじゃ流石に無理でしょ。。。」

 なんて思っては失礼かもしれませんが、格上に対してビルドアップが出来て、初めて成功と言えます。ですが格上に対して配置だけではどうしても勝てません。

 

 話は逸れましたが、何を考えてビルドアップをするか。

 

 それは、

 『敵の背中をとる』

 です。

 

 「え、それだけ??」 

 この話を友人に話した時にも言われましたが、それだけです。

 敵の背中を取る=守備が出来ない

 ということです。

 

 例えば、敵の最終ラインの背後を狙うのはなぜでしょうか?

 「ゴールに近いから!」

 「シュートが打ちやすいから!」

 なんてことをうちの選手も話してましたが、答えは、

 「フィールドプレーヤー全員が守備が出来なくなるから」

 です。

 

 最近は、「ライン間に人が立ちなさい」

 なんて教えているチームも増えましたね。

 ライン間というのは、結局、敵の背中でボールを受けるということです。敵の背中でボールを受けれれば、後は前にいる敵をやっつけるだけです。

 ドリブルで抜くことも同様です。敵をドリブルで抜いてしまえば、その敵は守備が出来ません。

 背後を狙う・ライン間に立つ・ドリブルで抜く

 全ては相手の守備を無効化することの手段の1つなのです。

 

 例えば、相手チームがしっかりとブロックを敷いて守備をしてくるチームだとしましょう。

 彼らは自分たちの射程範囲に入ってくるまでは、自分たちから形を崩さず、中に入ってきたボールに対してボール奪取を試みることが目的です。

 そういったチームと対戦する際には選手に対して

 「敵を引き出して背中を取るゲームだよ」

 と伝えています。

 

 より具体的なシーンで考えてみましょう。

 ボランチがライン間でボールを受けるとしましょう。

ライン間でボールを受けることで、敵ボランチが隊列を崩してボールにアプローチをかけてきます。

 その瞬間チームとして狙うのは、出てきた敵ボランチの背中にボールを届けることです。

 この時に背中にボールを届ける方法は3つしかありません。

①ボールを受けたボランチが、出てきた敵ボランチを自らドリブルで交わして背中を取る

②ボールを受けたボランチが、出てきたボランチに奪われないように自ら縦パスを入れて背中を取る

③ボールを受けたボランチが自ら縦パスを通せない場合は、近くの選手を1度経由して(壁パス)背中を取る

 です。

 ①〜③のどれかで敵の背中が取れれば、同様に次の列の背中を狙いに行く。この作業をひたすら繰り返して前進を試みればいいだけです。

 簡単ですよね。

 

 ですが、敵がボールを奪いに来ないで構えているだけの時もあるかもしれません。 

 であれば、以下のプレーを選べばいいと思います。

A. 後ろに下げてやり直す。

B. 自らボールを前に運ぶことで、強制的に敵を引き出す。

 

A. は敵を引き出せないけど、ブレスバックがかかってくるなどのパターンです。

 無理せず次のタイミングでまた引き出す作業をしましょう。

B. ではスピードを上げないことが必須です。スピードを上げてボールコントロールが乱れては次のプレーに支障をきたします。運ぶ場所としては敵と敵の間に進んでいくことが望ましいです。

敵の間を進もうとするので自動的に敵2人がスライドせざるをえません。そうすることで左右の味方がフリーになります。そして、そこから背中を取りやすくなっているはずです。

 

 また前からプレスをかけてくるチームに対しても同様です。

 「前からプレスをかけてくる=勝手に背中を空けてくれている」

 という認識でいるよう伝えています。

 つまり、プレスをかけてきた背中をとればいいだけなのです。

 

 よく見られるシーンで

 センターバックからゴールキーパーへバックパスをした際に、敵のフォワードが2度追いでゴールキーパーにプレスをかける場面があります。

 このとき、ほとんどのチームは敵フォワードがプレスをかけてきてない方向にトラップをして逃げることを選択しますが、これがビルドアップの出来ない理由です。

 敵がプレスをかけてきたのだから①〜③のいずれかでバックパスをしてきたセンターバックにボールを逃がすことが目的となります。

 

 あくまで、これらは考え方であり、私が選手に伝える時に、どうやったら分かってくれるかなと試行錯誤して辿り着いた伝え方になります。

 今の選手はこれでわかってくれますが、これでは理解できない可能性もありますし、これではない伝え方もあるかもしれません。

 是非何か面白い教え方があれば教えていただきたいです。

 選手でビルドアップが困っている人がいれば、ここに書いてあることを少し意識してみてください。

 上手くいかなければ捨てればいいだけです。トライしてみてください!