サッカーをしていれば、『キックの時はしっかりとボールを見なさい』というアドバイスを何百回と聞いてきたのではないでしょうか。ボールの中心をとらえることで綺麗な回転のボールや力強いボールを蹴ることが出来ます。だからこそ、最後までボールを見ることは非常に大切です。
しかし、いつまで経ってもボールを見て蹴りなさいというのは、その選手のレベルアップを引き留めているように私は思えます。
サッカーをする環境のレベルが上がれば上がるほど、敵のボールに対するプレススピードは上がり、インターセプトのスキルも上がります。
プレスがかかるということは、ボールを見たいという気持ちが強くなり、ついついヘッドダウンをしてしまいますよね。
インターセプトというのは、ボールホルダーが蹴る際、ボールの置き所、先に見ていた場所、体の向き、振り足の角度といった情報から瞬時に予測して動きます。また、その作業を積み重ねることで、感覚が研ぎ澄まされ、なんとなくこっちにくるというものが出来上がっていきます。
味方が空いているので、丁寧にパスを出そうとボールを見て蹴り、顔を上げると敵にインターセプトをされてしまった。なんてことを経験したことがある人はたくさんいるでしょう。
では、どのようにインターセプトをされる確率を下げるか。
それは、『敵を見ながらボールを蹴る』です。顔をあげてボールを蹴ることで、ボールを蹴る最後の最後の瞬間まで敵を見ることができます。
ひと昔前に、ジュビロ磐田の遠藤保仁選手のコロコロPKが流行りましたが、原理は同じです。遠藤保仁選手のコロコロPKはゴールキーパーが先に動くので、その逆に蹴るというもので、最後の最後までゴールキーパーを見ていましたね。
私が推奨しているのは、コロコロPKと同じように『顔を上げてボールを蹴る』ことです。
欧州のトップレベルの試合を見ていれば分かりますが、ビルドアップをしている際にボールを見て蹴っている選手はほとんどいません。きちんと顔を上げて周りの状況を確認しながらボールを蹴っているのです。
ですが、いきなりボールを見るなと言われても難しいことですよね。ではなぜ難しいのか。
それはもちろん、ボールを見ないと、ボールがどこにあるか分からないからです。
ボールは球体なのでなかなか静止してくれません。だからこそトラップで止めても数cmずれてしまうとミスキックの可能性が高まります。
だからこそ、以前の記事でも書きましたが、ボールを止めるということが重要なのです。
また、止める練習を繰り返すことで、止めた時に『これくらいズレたな』ということが感覚で分かるようにもなります。
感覚でボールの位置が分かるようになれば、意識をボールではなく周りに向けることが出来るので、顔を上げてプレーできる時間が増えるでしょう。
また、いきなり顔を上げることが難しい場合におすすめするのが、『周辺視野の活用』です。
例えば10m先の人にパスを出す際、普通はボールを見て蹴ります。
それを目的地(10m先の人)との中間の5m先に焦点を合わせると、周辺視野でボールと10m先の人が確認することが出来ます。
焦点をずらすことで、ボールと周囲が同一視野に入れることが出来ますね。
周辺視野で周りの動きを確認できるようになれば、プレーの幅が広がります。パスをする際だけでなく、ドリブルでボールを運ぶ際にも周辺視野で周りが確認出来れば選択肢を確保しながらプレーできるでしょう。
もちろん、ボールを見て蹴らなければいけない場面もありますが、ボールを見ないで蹴れるようになることで、周囲の状況がより把握可能となり、より良い判断が出来ることが確実に増えます。
是非試してもらえればと思います。
【おまけ】
周辺視野を広げたり、周辺視野の認知力を上げる為に、私が高校生の頃行っていたことが『マジカルアイ』の活用です。目が良くなるということが書かれている本ですが、周辺視野で物を認識する力も養うことが出来ます。焦点をずらすと絵の中に違う絵が浮かび上がるという面白い本なので、試す価値ありです。