全国常連コーチによる高校サッカー戦術

高校サッカーまたはそれ以下の年代で使える戦術、原則について深堀しています。あくまで私個人の意見です。参考にしていただいたり、意見を頂けると幸いです。

ポゼッションは三角形で解決する

 ジュニアユースに入って一番最初に習った戦術的要素はポジショニングの基本である『高さ、幅、深み』をとることでした。

 実際に練習や試合で意識してみると、プレーに余裕が出て面白いなと感じたのをよく覚えています。

 今教えている高校生の選手たちも、そういったポジションを無意識に取ろうとするので、J下部だけでなく、町クラブや中体連でもそういった指導が行き届いているのだなと感じます。

 言い方を変えれば、とりあえず『高さ、幅、深み』を取りなさいとだけ習ってきたばっかりに、それしか出来ず、それをしなくてもいい場面ですらしてしまう選手がたくさんいる状態です。

 

 さて、本題に戻りますが、『ポゼッションは三角形で解決する』ということについて話していきたいと思います。

 

 

 これは、皆さんもよくご存知だと思います。マンチェスターシティがファイブレーンを使ってひたすら三角形を構築しながら、ボールを保持して攻め倒す。一昔前ですと、バイエルンミュンヘンも同じ事をしていましたね。

 グアルディオラ監督が常々三角形の重要性について話しているので、ご存知の方も多いでしょう。

 

 今回、私が定義する三角形も同じように味方選手で三角形を形成することはグアルディオラ監督と同じです。

 更にもう一つ加えたい要素は、その三角形内に敵を一人入れるということです。

 そうすることで狭い状況や、プレスがかかった状況下でも簡単にボールを動かしていくことが出来ます。

 

 むかし、遊戯王カードで遊んでいたり、アニメを見ていた方は知っていると思いますが、トラップカード『六芒星の呪縛』というものがありました。六芒星の中に敵のモンスターは入れると攻撃力が下がるというものでしたが、イメージはこのトラップカードと全く同じです。

 ボールホルダー+受け手の2人が三角形を作り、敵選手1人をその三角形内に入れることで、パスコースを2つ生み出すことが出来ます。

 2つパスコースがあるということは、三角形内の敵からするとどちらにボールが動くか分からず、狙いを定めることが出来ません。

 つまり、ボールホルダーは三角形を作るだけで、敵に狙いを絞らせない状態でどちらにボールを捌くか選択することが可能になります。

 想像してみてください。あなたが守備をしている時パスコースが一つであれば100%でアタックしますよね。でも、右にも左にもくるかもしれないと、どっちを消せばいいのか迷ってしまいます。

 パスコースが2つあることで、意識が分散し、敵の攻撃力が下がるというわけです。

 そして、それをボールが動く度に、ボールに関わるであろう選手たちが全員、連続で三角形を形成していきます。

 

 ここで注意してもらいたいポイントとして、パスを出したら終わりだと思う選手、パスを出した途端に止まる選手がいてはならないということです。一人がパスコースを形成しなくなった瞬間、パスコースが消え、敵が100%でアタックするチャンスを与えてしまいます。

 

 これを意識しながらプレーするシーンとして多いのが、前からプレスをかけられた時です。

 うちの選手たちは、パスを出したあとすぐに三角形で敵を囲んでしまうので、ボールが動き、あっという間にプレスを回避したように見えます。

 相手の指導者の方からもプレスの剥がしが上手いですね。と言われることが多々あります。

 ただそれは、ボールを離した後に敵より早く移動してパスコースを作る。もらえなくても次に移動して三角形を作る。ということをサボらずに行っているからです。

 逆に相手チームはそこが徹底できていないチームが多く、前からのプレスがなければ回せるが、プレスがかかった途端にボールが回せなくなるというのをよく見かけます。

 本気でボールを保持したいのであれば、敵より移動距離を増やし、移動速度を上げなければならないのです。

 

 また、この応用が、『高さ、幅、深み』の逆を取ることです。

 例えばサイドバックが内側に入るのもこれに当てはまります。

《例1》

 あなたが左サイドバックだとしましょう。

 右のセンターバックから左のセンターバックにボールが移動してきました。おそらく次はあなたにボールが入ります。でもあなたのマークはプレスをかける準備をしており、ボールを受けるとハマってしまいます。

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 ところがこの三角形の原理を使い内側に入ると、味方のサイドハーフを含めて新しい三角形を出現させることが出来ます。

 

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 このポジションを取ることで三角形の中に入れられた敵選手はどちらを切るか迷いますし、青の選手達はどちらに出ても次の選手と三角形を形成しながら、前進していくことが可能になります。

 

《例2》

 あなたが右のセンターバックだとしましょう。

 右サイドハーフの選手が縦を切られ後ろを向いてしまいました。中にサポートを作るも敵が上手く内側を切るので、仕方なく右サイドバックにボールを下げました。その瞬間スイッチが入り、敵全体がプレスをかけてきました。もちろん深みは取りますが、自分にもプレスがくる為、長いボールを蹴り込むしかなくなる。

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 こんなシーンをよく見かけます。ただこれも同じ三角形を作ってしまいましょう。

 あなたが自分のマークより前に出てみてください。そうすることでゴールキーパーとあなたと右サイドバックの3人で三角形を形成し、どちらかにボールを流すことが簡単になります。7割以上の確率で敵フォワードはあなたにつられるので、ゴールキーパーにボールは戻りますが、絶対にプレスがかかることはないでしょう。

 一つ前の深みをとる選択をしていればプレスがかかり、言わば捨てボールのような形で前に長いボールを蹴っていたのに対し、100%マイボールになりました。こんな楽なことがあるでしょうか?

 

 このように、今までにあった原則とは逆のことをすることで、マイボールの時間を増やすことも出来るのです。ただ、そこの大本にあるルールは『三角形を作り、敵を一人その三角形に入れる』ことです。

 常にこのことを頭に入れたうえで指導、プレーをしてみると、よりボールが動きやすくなるかもしれません。是非、考えてみて下さい。