ここ最近、田中蒼選手のパス アンド コントロールの動画が流行っていて、色々なチームでも実際にトレーニングに組み込まれていたり、自主練習で取り組んでいるのをよく目にします。
ここ5年間Jリーグで圧倒的な強さを誇る川崎フロンターレが止めて蹴るを重要視していることから、『止める蹴る』が流行語になっているようにも感じます。
そこまでして言われている『止める蹴る』は果たして本当に重要なのか。そこまで意識する必要があるのかということについて話していきたいと思います。
まず『止める蹴る』のイメージから考えていきましょう。『止める蹴る』のイメージを野球のキャッチボールに例えてみましょう。
みなさんはどうイメージしますか?
まず簡単な『蹴る』からいきましょう。
『蹴る』=『投げる』
ですよね?
ここがズレることはないでしょう。
では、『止める』はキャッチボールに例えるとどの動作になるでしょうか?
ここで、『キャッチ』と想像した人は、ありがとうございます!よく引っかかってくれました!
答えは、『キャッチして投げれる構えをする』です。
ようは、ボールをキャッチするだけでなく、『いつでも私は投げれますよ!』という体勢になることが、サッカーの『止める』と同じことを指すのです。
この具体例を使って何を伝えたいかというと、トラップとはボールをただ止めればいいのではありません。
そもそも、『ボールを止める』ことが競技目的ではないですよね。止めた後には蹴る動作や、運ぶ動作が入るのがサッカーです。だからこそ、いつでも蹴れるところに止めなければいけないのです。
さらに『止める』というのは、どこか一箇所に蹴れるようにするのではありません。右も真ん中も左もどの方向にも蹴れるように『止め』なければいけないのです。
これを私は三方向と呼んでいますが、三方向に蹴れるポイントというのは1箇所しかありません。是非、今ボールを使って確認してみてください。私の場合は利き足の親指の少し前あたりですが、そこにボールを止めれば三方向に蹴ることができます。
ここで、よく出る質問は、「いつでも蹴れるようにすればいいなら、流してもいいじゃないですか」というものです。
答えは基本的にダメです。
例えば、あなたは右センターバックで、左センターバックからパスをもらって右サイドバックにパスをするつもりだとします。その際、トラップが右にずれてしまいましたが、私は右の人に蹴るから問題がないと考える人が多いです。たしかに、パスが通る確率が極端に下がることはないでしょう。
では何がダメなのか。それは、あなたがトラップを流してしまったことで、自分からパスコースの限定をしてしまったことです。右にトラップが流れる=左側にボールを蹴ることは、ウイニングイレブンでない限り不可能です。そうなると、敵は何もせずにパスコースが減り、動きが簡単になります(スライドするだけ)。その為、あなたからサイドバックにはパスが通ったけれども、サイドバックの人も誰かにパスをつけなければいけません。そこでもトラップが流れてしまったら?また限定がかかります。この限定の積み重ねが、どこかでプレッシャーを大きく受ける要因へと繋がってしまうのです。
反対にトラップを流さなければ、どこにでも蹴ることが出来るので、敵は毎度どこにくるのか分からず、自分達から限定をかけなければいけません。もちろん、そう簡単にその限定にかからないようプレーを選択していくことができるので捕まりにくいですよね。
基本的にと言ったのはどういう事かというと、
敵のプレッシャーをうけ、どうしようもなくトラップを流して逃げるというシーンは存在しますが、それは、前回の記事で書いた、ボールをもらった位置が悪いからであり、いい位置でもらっていればトラップから逃げなければならないシーンはそうそうありません。
ボールを運ぶときも、常にどこにでも蹴れる場所におくことで、パスで逃げる選択を持ちつつ前進したり、移動することができます。だからこそ、自分の止める位置を理解することは大切であり、どんなボールが来てもそこにピッタリと止める技術が必要なのです。
また、前回の記事にも書きましたが、周りの選手はあなたがボールが止める前提で動き出します。あなたのボールが止まらず蹴るタイミングを逃してしまうと、他の選手たちはマークに捕まってしまったり、そこから逃れようと別の動きが必要になってきます。つまり、ズレが生じてしまい連携が取りづらいわけです。
更には、上のレベルに行けば行くほど、止めた後にボールを見る選手は少ないです。ボールは止まっているのだから、ボールの位置を確認する必要はなく、次に出す方を最後まで観れた方が、インターセプトをされる確率を下げることが出来るというわけです。欧州リーグでボールを見たかってる人はほとんどいないでしょう。
このように、ボールを止めなければいけない理由はたくさんあります。また、ボールを止めれる選手は、上記のことを踏まえた上でトラップを流すことも出来るでしょう。
最初から流している選手は、いざという時に止まれません。だからこそ、『止める』を追求していく必要があるのです。
ここまで3回続けてサッカーの原則について書いてきました。もちろん、これらをしなければいけないことを既に知っていた、もしくは実践している人もいたのではないでしょうか?その中には無意識でしてる人もいるでしょう。
ただ、大事なのは、なぜこれらをしなければいけないか理屈で分かった上で意識することです。なんとなくやってきた事を、意識してプレーする事でより精度を上げることが出来るでしょう。
是非何度も読んで頭の中に叩き込んでプレーしたり教えてもらえればと思います。
【おまけ】
私の中学時代の監督は風間監督の元でヘッドコーチを行い、風間イズムを継承し、今でも事あるごとにトレーニングメニューや試合での考え方などを教えてもらっています。文字ではなく実際に映像で確認したいという人は是非購入してみてください。