全国常連コーチによる高校サッカー戦術

高校サッカーまたはそれ以下の年代で使える戦術、原則について深堀しています。あくまで私個人の意見です。参考にしていただいたり、意見を頂けると幸いです。

守備時の前プレとリトリートどっちが良い?

 近年、Jリーグではリトリート、ブロック形成をして守備をするチームが圧倒的に増え、それが大学サッカー、そして高校サッカーまで浸透してきています。ですが、依然として、欧州リーグでは前から猛プレスをかけてくるチームが多くあり、高体連最強の青森山田高校も圧倒的な前プレスで仕留めにかかっています。

 今日は、前プレかリトリート、どちらがいいのかを考えていきたいと思います。

 

 

 結論から言うと、自チームの能力と敵チームの能力差から考えるのがいいかと思います。ある程度数的不利にされても時間を稼いだり、ボールを奪える能力を持っている選手たちがいるのであれば、前からプレスをかければいいし、逆に数的同数でも不安がある場合はブロック形成をするのがいいですね。

 両方のメリット、デメリットを見ながら考えていきましょう。

 

 前プレのメリット、一つ目は、奪った際にゴールへの距離が近い=チャンスメイクの確率が上がる=自陣ゴールから遠い場所にボールがある=失点リスクが少ない

ということです。私の記憶で鮮明なのは、19-20シーズンのCL決勝でのバイエルンミュンヘンvsパリ・サンジェルマンでの猛プレスの掛け合いです。目まぐるしいボールの奪い合いがほぼ90分間続いた見ていて激アツな試合だと思った人はたくさんいたのではないでしょうか。

 どちらもいち早くボールを奪うために、選手を前に押し出してプレスをかけ、奪ったところからカウンターを発動というような流れが多く見受けられました。

 

 前プレのメリット、二つ目は、敵に選択肢を与えさせないことです。

 人に対して人を押し出していくので、マンツーマン気味になりますので迫力がありプレッシャーに感じることでしょう。また、単純に自分に対して猛プレスがかかるとヘッドダウンしてしまいますよね。一人はかわせたけど、二人目で捕まったなんてこともよく見る光景です。

 

 逆に前プレのデメリットは背後が空きがち、、同数になりがちということです。

 精度の高いロングボールや、ノージャッジでディフェンスラインの背後に蹴りこまれると、5回中4回は防げても1回がチャンスになってしまう。それを繰り返されると、後ろの選手たちは神経をすりへらしてしまいますね。

 

 このように前で奪いきった場合はチャンスになりますが、逆にワンチャンスをモノにされてしまう可能性があるのも前プレスの難しいところですね。リヴァプールが自信をもって前から猛プレスをかけれるのは、前線の選手の能力が高いより、センンターバックにファン・ダイクゴールキーパーにアリソンがいて守れるという自身の現れでしょう。

 

 では、リトリートのメリット・デメリットはなんでしょうか?

 メリット一つ目は、奪いどころを決めやすいということです。

 よく『内側を閉める』と言われますが、中央を割られたくないチームは外を空けて中を固めるでしょう。そうすると敵はサイド攻撃になりがちになりますので、そこに対人の強い選手を置いておけば、ボール奪取の可能性が上がります。

 アトレティコマドリーのシメオネ監督やチェルシーのトゥヘル監督はボールを回してくるチームに対して5バックや4バックでブロック形成をし、引き込んだところを奪いカウンターで仕留める戦術をよく使います。

 

 メリット二つ目は、背後に蹴られずらいということです。

 ボールを繋ぐことが出来るのに最初から背後に蹴りこむチームはほとんどないでしょう。逆に、繋げるなら繋ごうかと、いつも蹴っているチームも繋いできてくれるかもしれません。それに対して、自分のチームは奪いどころがチームとしてはっきりしているので戦い方はぶれずにできるでしょう。

 

 反対に、デメリットはブロックを組んだとしてもボールは22cmしかないのですり抜けていくことがあり、ブロックの中に侵入されてしまうと崩れてしまいやすいということです。

 ポジショニングを大事にするチームからするとブロックを組んでくれることで逆に立ち位置が決定できるので、簡単にボールを動かすことができてしまいます。スライドやラインの上げ下げも含めてチームで戦い方を統一する練習がより必要になるでしょう。

 

 このように、どちらもメリット、デメリットはありますが、私個人的には当たり前ですが、敵に合わせて使い分けるのが大事だと思います。前から奪えるなら、奪いにいくべきですし、奪えないなら引き込んでカウンター気味にゴールを奪いに行った方がいいいでしょう。

 元日本代表監督のイビチャ・オシム監督も、『自分達がやってきたことを貫くことが良いことではない。敵に合わせて変化させるチームが良いチームである。』と話していました。

 メリット、デメリット含め皆さんもじっくり考えて頂ければと思います。

 

【おまけ】

 守備というのは目を瞑りがちですが、強いチームは失点をしません。そういった意味では守備が組織だって機能すれば、失点リスクを下げることが出来ますね。だからこそ、選手個人としてもら指導者としても勉強すべきですし、元日本代表センターバック岩政大樹さんが書いているこの本を読むことをお勧めします。